HMW事例:土砂崩れ前の斜面の時間変化

解析内容の背景

ある有料道路の法面で土砂崩れが発生したというニュースを目にしました。幸い人的被害はありませんでしたが、状況次第では大事故につながるような場所でした。

そこで、すぐに法面の時間変化を見ようと解析に取りかかりましたが、そのときには衛星データは土砂崩れ直後のデータが存在しなく、直前までのデータだけを解析し、土砂災害の予兆抽出を試みました。

解析結果

崩壊した範囲は、崩壊しなかった範囲と比較して、崩壊の2年ほど前から相対的に年4~5mm強の速度で滑り落ちはじめていることがわかりました。

【崩壊した範囲のなかで、もっとも滑り速度が大きかった箇所の時系列グラフ】

【上記地点からおおよそ50m離れた崩壊しなかった箇所の時系列グラフ】

考察

崩壊した箇所のグラフをよく見ると、崩壊直前(グラフの右端)でグラフの角度が緩やかになっています。それまでのゆっくりとしたすべりが限界に達しつつあったと捉えても良いかもしれません。このように、SARデータを使って時々刻々と地盤の変化を見ていく際には、明らかな沈下や隆起はもちろん、それまでと違う動きをし始めたら注意する、という視点が必要と考えられます。

なお、今回解析した範囲は、(地球視点での)地殻変動の影響が大いのでそれに関する処理を施しています。しかし、それ限界があります。ただし、この例のように、崩壊しなかった範囲と比較することで、崩壊箇所がしなかった箇所に対して相対的にどのような動きをしたのかを捉えることができます。つまり、土砂災害の予兆をつかもうとするなら、SAR解析は、ある程度広い範囲を網羅的に(もしくは、確実に安定している箇所と、不安定と考えられる箇所を同時に)見ていく必要があるということです。