HMW事例:近隣の工事による住宅街の地盤沈下の時間変化

事象の背景

ある都会に空き地があり、そこに新たなビルを建てるための工事が始まりました。そこは、緩やかな傾斜地で、空き地に対して標高の高い側に住宅街が広がっています。ビル建設ですので基礎敷設のため、空き地を深く掘り下げはじめました。時期を同じくして、異変が現れ始めました。

解析結果

工事現場を含む広範囲を解析しました。その結果、地盤沈下は、掘り下げた場所の標高の高い側に向かって50m程度の範囲に及んでいることがわかりました。掘り下げた場所の延長上にない範囲は地盤沈下していないことから、工事が原因と推察できます。参考として、SAR解析でもっとも沈下量が多かった箇所の時系列グラフを示します。注意は、グラフはあるピンポイントを示しているのではなく、SARの分解能である14m四方の平均(のようなもの)であることです。

考察

状況とSARの解析結果から考えるに、影響が出てしまった一体は、地盤沈下というより、軽い地すべりのような状態になってしまったのではないかと考えられます。

傾斜地を掘削するときには、通常は切土・盛土工事のときのような対策工事を施してから行いますが、それでも不安な場合には、SARデータを用いた時系列解析で監視するのがよいと考えます。

なお、今回の解析では、工事の始まりと終わりに近い時点の間にある画像データを用いました。その結果、工事開始前から沈降がはじまっているように見えますが、SAR解析では、グラフの開始点近いほど、値の正確性が損なわれます。したがって、より過去のデータから解析することにより、工事開始前は際だった現象(沈降や隆起)は現れないことが示せるのではないかと考えます。このように、見たい現象をSARの時系列解析で見るには、該当期間だけでなく、それより過去のデータから見ることをお勧めします。