HMD事例:トルコ東部の地震の被害

Edafosのサービスの1つである「HMD(Hazard Mapper DISASTER)」の活用事例の紹介です。

トルコ東部の地震

トルコ東部の地震は、日本時間2023年2月6日に発生したプレート境界地震で、最初にマグニチュード7.8(震源の深さ17.9km)が起き、9時間後にマグニチュード7.5(同10km)と、大きな地震が2回立て続けに起き、広範囲に甚大な被害を及ぼした地震です。

この地震について、Edafosが開発した手法(詳細はコチラ)で、SARデータから被害箇所を抽出しました。
使用した衛星画像はSentinel-1です。
Sentinel-1は、トルコのように砂が多い場所が得意ではないですが、このような難条件でどの程度被害抽出が可能かを見てみました。

位置関係

まず、トルコ東部の地震に関係する、断層、震央、今回の解析範囲をプロットしました。
トルコ東部の地震

解析結果がこちらで、赤い箇所が被害が甚大だった箇所です。
(注:当社基準で、解析結果の信頼性が高い箇所のみを表示しています。)

解析範囲全域にわたって被害が及んでいるのがわかります。
細部をていねいに見ると、Sentinel-1が苦手とする地表では、部分的に被害があっても抽出されていない箇所もありましたが、被災後に撮影された光学データ(衛星写真)と照らし合わせると、概ね抽出できていることがわかりました。
本ページでは、黄色で囲んだ特徴的な箇所について説明します。

①断層線に沿った建物被害

断層線上に町が点在していますが、ほとんどの町で被害が起きているのがわかります。
全半壊や火災による焼失はもちろん、建物が傾いただけの場合も抽出しています。

②河川沿いの液状化

北東から南西にかけて、河川と河川敷があり、そこが赤い帯となっているのがわかります。
ここは砂の採取場でもあるのでそれが崩れた可能性もありますが、立地的に液状化の可能性が高いです。
図の真ん中からわずかに右下に、河川から分岐した赤い帯がありますが、ここは町です。
可能性としては、ここは旧流路上にできた町で、地盤がもろく地下水も多く液状化した可能性があります。

③湖畔斜面の地すべり

ここは、まるでリアス式海岸のように入り組んだ地形にある湖畔の斜面です。
人間活動はごくわずかですが、震源から離れたこのようなところでも色がついています。
地形から、地すべりや斜面崩壊などが起きた可能性があります。
小さな集落につながる一本道が通っている場所なので、もし大きな土砂災害だったら、集落は陸の孤島になっているおそれがあります。

HMDの活用方法と注意

調査範囲をふるいにかける

地震があった際のHMDのもっとも便利な活用方法は、人が動く前にまずHDMで被害箇所を抽出し、さらに、被害範囲の大小(HDMで色がついた範囲の大きさ)で、実態調査の優先順位づけをする、という方法です。これにより、労力・時間・経費の削減につながり、復旧・復興へそれらを温存できます。

目視ではわからない被害箇所を突き止める

地下で地盤の砂泥と水が混ざり合って緩くなり、地上に吹き出すと液状化だと目で見てわかりますが、地上に吹き出さずに目視ではわからないが地盤が緩くなっていることがあります。この場合、緩んだ地盤はゆるりと傾斜していることがあり、このような現象を抽出するにはHMDがもってこいです。放置してしばらくのちに被害が出る前に手当てするかどうかを決めるのに役立ちます。

注意事項

HMDは、「衛星から見える箇所(≒地表)の性状に変化があった箇所」を抽出します。そのため、工事中の箇所や、駐車場や港湾など、車やコンテナが日々めまぐるしく動いている箇所も抽出してしまうことに注意が必要です。

 

(2023年4月17日記)

 

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